時のかけら
・彼とあたしの関係
哲哉さんの家から歩いて数十分すると、アーケードに囲まれた昔ながらの商店街がある。
都会のような華やかさはないけれど、人情に溢れた温かさが感じられる。
この一週間通いつめた商店街。
八百屋のおじちゃんや、魚屋のおじちゃん、肉屋のおばちゃんなど、たくさんのお店の人と顔なじみになった。
初めてここを訪れたのは日曜日。
大きなデパートで買い物をした後に立ち寄ったんだ。
哲哉さんと一緒に来たものだから、
「あら若奥さん、今日は何にするかい?」
あたし“若奥さん”なんて呼ばれてて。
ちょっとくすぐったい表現に顔を緩めつつ、
「若奥さんじゃないですよ〜!!」
「アハハッ! じゃあ哲哉の未来の嫁さんか」
豪快に笑われ、毎日同じようなやりとり。
初めて一緒に来た時に「彼女?」と聞かれて、哲哉さんが否定しなかったものだから。
だけどそれを否定して、どういう関係か聞かれても困るから。
ここでは“哲哉さんの彼女”ということになってしまった。