時のかけら
痛みを増していく胸を押さえ、何とか肩で息をしていた。
痛い……。
突き刺さるような胸の痛み。
前にもこんなことあった……哲哉さんと過ごす……前……。
ッ……イタッ。
あ……また……。
「ちょっと大丈夫?」
背後から聞こえてきた声に、あたしは直ぐ様振り返った。
あれっ?
さっき何か思い出しかけたような……。
頭痛がして……
分からない。
「胸押さえていたけど、どこか悪いの? ちょっと顔真っ青じゃない!!」
え?
あたし胸なんか押さえていたの?
頭痛がしただけじゃなかった?
目の前にいる女の人は、本当に心配そうな顔つきであたしの顔を覗き込んできた。
いつもの頭痛はあっという間に治まって、あたしはその人に笑顔を向けて軽く頭を下げた。
「大丈夫です、心配してくれてありがとうございます」
「本当に?」
「はい、大丈夫です」
本当に哲哉さんには頭痛がしたこと黙っていないと。
「それならいいんだけど……。顔色もよくなったし。体調悪くなったらちゃんと病院行くんだよ?」
あたしの顔を見つめて微笑み、優しく肩を叩いて、そのまま歩きだしていった。