時のかけら

通り過ぎていく女の人の後ろ姿をあたしはぼんやりと眺めていた。



何だろ……
あたしあの人と会ったことあったっけ?



なぜか見たことあるような気がしたんだけど。


それにしてもいい人、本気で心配していたみたい。



……あっ、そっか。
哲哉さんの雰囲気に似ているんだ。



見た目は栗色のショートカットで、背も高くてボーイッシュな雰囲気。


話し方やあたしを見る目が優しさで溢れていて、一緒にいると居心地がいいと思わせられる。



ここの人たちは本当に温かい。


人の優しさに触れて温かくなる胸を押さえながら顔を上げると、不意にその女の人の服装に目が向いた。



白いカッターシャツに紺のプリーツスカート。


ダボダボの靴下?


肩に下げているスクールバッグ。



格好からするにきっと学生、あたしと同じ年くらいかな。


あたしも本当だったら制服着て学校に通っているはずだよね?


いなくなったことでみんな探しているのかな。



家族や友達、先生……
みんな心配しているのかな。



だけど、どうしても元の生活に戻りたくないって思うの。



我儘だって分かっていても、その気持ちを止めることができなかった――……。




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