時のかけら

その後、買い物を終えたあたしはまっすぐ家へと向かっていた。



赤く染められた空の下に広がる雲。


空をはばたく烏の姿。


少し涼しくなった風。



学校帰りの制服姿の学生に仕事帰りのスーツを着たサラリーマン。


昼間より多くの人が慌ただしく行き交っている。


その波に乗るようにあたしも早足で哲哉さんの家へと急いだ。



携帯や時計を持っていないから正確な時間は分からない。


だけど日没の近づいた空から、哲哉さんが帰ってくるまであまり時間がないと悟る。



早く帰ってご飯作らないと。



そんな気持ちがあたしの足をさらに早めていた。


あたしが哲哉さんといるためには、ちゃんと家事をこなさないといけない。


何もしないで一緒にいるなんて虫がよすぎる。



まだ……
哲哉さんの傍にいたい。



家事をしているからといって、ずっと一緒にいられるわけじゃないけど。



それをすることで、哲哉さんの隣にいてもいいという存在意義を持ちたいだけなのかもしれない。


きっと自己満足……。




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