時のかけら
「そうだ、あれをしようかな」
ポツリと一人で呟きながらクローゼットの前まで行って、ゆっくりと扉を開けた。
そのままそこに屈んで、奥行の深いクローゼットの右奥に手を伸ばす。
確かここに置いていたはず。
「あっ……」
手の甲に何かの角が当たって、それだと認識したあたしは取り出してみた。
あった!
“ジグソーパズル”
哲哉さんが一度も手をつけていないという、1000ピースのジグソーパズル。
買ったはいいものの哲哉さんはまったくしなかったから、あたしにしていいよって渡してくれた。
だからあたしが暇な時にしようって思っていたんだけど、まだ手をつけていないかったんだよね。
そしてもう一つ。
買物に行った時に哲哉さんが買ってくれた、何も描かれていない真っ白な1000ピースのジグソーパズル。
どっちから先にしようかな……。
そうやってジグソーパズルの入った箱を前に悩んでいた。
『ピンポーン』
あ、哲哉さんだ。
チャイムが鳴り、あたしはジグソーパズルをそのままにして、玄関へと駆けていった。