時のかけら
「どうしたの?」
ボーッとしていたあたしの顔を、哲哉さんが突然下から覗き込んできた。
あまりの顔の近さに胸がドキドキする。
「な……、何でもない」
「そう? ならいいけど。何かあればちゃんと言うんだよ!」
そう言って頭をくしゃって撫でると部屋に戻っていった。
哲哉さんが帰ってきて嬉しくてボーッとしていただなんて、面と向かって真面目には言いづらい。
撫でられた頭を手で押さえ、触れた部分の熱を感じる。
温かい……。
「ルーリー、ご飯食べるよー!」
「えっ? あれ?」
いつの間にか部屋のテーブルの上にはお皿に盛り付けられた料理の数々。
もしかして、準備を全部哲哉さんにさせちゃった?
「早くおいで! 美味しい料理が冷めるよ〜」
「ごめん、哲哉さん! 準備全部させちゃって……」
「まぁまぁ、そんなことは気にしなくていいから、食べよ? 生唾出そうなんだけど、フフッ!」
哲哉さんは、今にもジュルっと音を立てそうな勢いで料理を覗きこむ。
それが本当に必死の形相で……。
作ったかいがあったなと毎日のように思わせられる。
「プッ……。うん、食べようか」
「よしっ、いただきまーす」