時のかけら
夕食時は二人で一日を振り返るのが日課。
本当に家族みたいに――。
今日は何があったとか、何していたとか。
毎日大して代わり映えがなくて取り留めのない話なのに、妙に盛り上がって話が尽きない。
「今日も“若奥さん”って呼ばれたんだよね」
「アハハッ、そっか〜。けど、ルリだったら本当にいい若奥さんになれそうだよね」
「んー、どうかな。あたしそんな柄じゃない気がするんだけど……」
「そう? 料理は美味しいし、家事もこなせるし。若いのにしっかりしてて、俺が嫁に欲しいくらいなのに! ……あ、顔赤くなってる!」
「えっ、うそっ!!」
あたしはお箸を持ったまま、慌てて顔を隠した。
冗談でも哲哉さんが“嫁に欲しい”って言ってくれたことが嬉しかったのかな?
恥ずかしかったのかな?
「なんてね。嘘だよ!」
う……嘘!?
その言葉を聞いたあたしは、あどけなく笑う哲哉さんをキッと睨んだ。
一人で慌てふためいて、嬉しく思ったりしてバカみたいじゃん。
思いっきり拗ねるもんね……。
「ごめんごめん! ちょっとふざけ過ぎた」
顔を背けたままのあたしの頭を優しく撫でる哲哉さん。
それにドキドキしてしまう自分が、何だか不思議な感じ。
「……赤くなってるのは冗談だったけど、嫁にってのは結構本気だったりしてね」
「えっ?」