時のかけら
カランカラーン。
音を立ててテーブルに落ちてしまったお箸。
あたしは一瞬、固まった。
「クスッ。ルリって可愛いね」
そして哲哉さんに笑われた。
ほ……本気?
あたしを嫁に?
どこまで本気?
突然の発言に頭の中は軽くパニックを起こし、まともに正面を向けなくなった。
「あ、本当に赤くなってきたよ」
「うーっ、だって……」
俯いたままそう言うのが精一杯。
今度は自分でも分かるくらい顔が火照りだす。
今にもお湯が沸かせるんじゃないかって思うくらい。
それくらい、あたしの顔は真っ赤になっているはず。
「ルーリ?」
「だめっ!! こっち見ないでってば!!」
近づく黒い影に手を前に伸ばしたら、ムニッという感触。
少しだけ視線を上げると、哲哉さんの顔に思いっきり指を突き刺しているのが見えた。
あ……、大丈夫、かな。