時のかけら

カランカラーン。


音を立ててテーブルに落ちてしまったお箸。


あたしは一瞬、固まった。




「クスッ。ルリって可愛いね」




そして哲哉さんに笑われた。



ほ……本気?

あたしを嫁に?

どこまで本気?



突然の発言に頭の中は軽くパニックを起こし、まともに正面を向けなくなった。




「あ、本当に赤くなってきたよ」


「うーっ、だって……」




俯いたままそう言うのが精一杯。


今度は自分でも分かるくらい顔が火照りだす。


今にもお湯が沸かせるんじゃないかって思うくらい。


それくらい、あたしの顔は真っ赤になっているはず。



「ルーリ?」


「だめっ!! こっち見ないでってば!!」




近づく黒い影に手を前に伸ばしたら、ムニッという感触。


少しだけ視線を上げると、哲哉さんの顔に思いっきり指を突き刺しているのが見えた。



あ……、大丈夫、かな。




< 79 / 135 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop