時のかけら
「えっ……と、ちょっと待って」
あたしの爆弾発言に困惑気味の彼。
頭を抱え落ち着きがなくなっていた。
そうだよね、あたしだって信じられない。
何で?
あたしは誰?
そんな言葉が頭の中を駆け巡っている。
地に足がついていない感じ。
本当はあたしの居場所なんてどこにもないんじゃないかって。
まるであたしという存在が、最初からなかったかのような……
そんな錯覚さえおこしてしまう。
暗くて深い闇に一人取り残されたような、激しい孤独感があたしを襲う。
あたしにまで聞こえるほど深くため息をついた彼は、ホットコーヒーを一口飲んでからあたしの顔を見据え話し始めた。
「本当に記憶がないの?」
「はい……」
「そっか、どうしようか? 家族が探していると思うし」
とてもさっきまで落ち着きがなかった人とは思えなかった。
別人のように落ち着いている彼は、真剣にしっかりとあたしを見つめる。
「よしっ、暖まったし外出ようか」
そう言って柔らかい笑顔を向けるとあたしの手を引いて、また強引に外に連れ出していった。