時のかけら
「クッ……アハハハハ」
あたしの指を掴みとり、顔から少し離して笑いだした哲哉さん。
どうしていいものか戸惑うあたしを、視線を外すことなくジッと見つめる。
「本当にルリって可愛い〜。慌てて人の顔に指突き刺しちゃうし、ね」
掴まれた指が、されるがままに握りなおされる。
そして哲哉さんは体を前に傾けながら、少しずつあたしに近付いてくる。
二人の指がゆっくりと……
あたしの頬に触れた――。
ムニッ。
「お返し!」
「……ひどーい!! あたしここまでムニッてしてないよ!」
それはもう、顔が変形するんじゃないかってくらい指を突き刺してきた。
おかげで頬の肉が上へ上がって、視界が悪くなっている。
あたしは哲哉さんの手を振り解いて頬を膨らませた。
「もう知らない! ご飯食べよ〜」
落としたお箸を拾って、視線をずらしてご飯を食べ始めた。
正面からはクスクスと笑い声が聞こえる。
本当にもう知らないんだから。