時のかけら
それからはお互い何も話さず黙々とご飯を食べていた。
別に本気で怒っているわけでもないんだけど、後に引けなくてふくれっ面のまま。
そんなあたしの様子を見て、クスクスと柔らかな笑顔で見つめる哲哉さんを盗み見る。
さっきの哲哉さんの発言。
驚いたけど、本当なのかな?
心の中でグルグルとあの言葉が渦巻く。
それと同時にドキドキと心臓がうるさくなってくる。
あたしは哲哉さんのことどう思っているんだろう?
そんな考えが微かに頭の中をよぎった。
それも哲哉さんの言葉で、すぐに打ち消されたんだけど。
「ルリ、これもらっていい?」
「うん、いいよ」
あまりにも自然に話しかけてきて、あたしまで普通に答える。
……もういっか。
いつまでもふくれたままでいるわけにもいかないし。
いいきっかけになったかも。
「って、それあたしの鰺のフライ!!」
「あ、だめだった? 美味しかったからつい。ルリもいいって言ったし……ごめんね」
「うー、あたしもちゃんと聞いてなくてごめんね、いいよ食べて?」
哲哉さんは嬉しそうに頬を緩めて、口いっぱいに鰺のフライを頬張る。
そんな風に美味しそうに食べてくれるなら、何度でもあげたくなるし。
哲哉さんの何気ない行動に気持ちが浮上していく。