時のかけら
・散りばめられた違和感
7月6日 土曜日――。
「ねぇー哲哉さん、今からどこ行くのー?」
車の窓を全開にして涼しい風を体いっぱいに感じながら、運転している哲哉さんを覗き見る。
片手でハンドルを握り、風にフワフワとなびく前髪が、何ていうか目をひかれる。
「ん〜っ、秘密!」
「えーっ、そう言われると余計に気になる!」
あたしが膨れっ面になったのが分かったのか、哲哉さんはクスクスと笑い出して口を開いた。
「……なんてね。海に行こうかと思っているんだけど」
そして少し怪しげな笑みを浮かべた時、タイミング良く車が赤信号で止まった。
前方に向けていた視線をあたしに移す。
ただ見られているだけなのに、胸がトクンと音を立てる。
やっぱりおかしい……。
最近こんなことばかり。
哲哉さんと一緒にいると、あたしらしくいられるような気がするものの、何だかいけない感情を抱きそうな、そんな気になってくる。
「ねぇ、ルリ?」
「は、はいっ!!」
一人考え込んでいたあたしは、声を掛けられたことに驚いて勢い良く返事をした。
そんなあたしを横でクスクス笑う哲哉さん。
あたしは顔をプイッと横に向けた。
もう……何だかなぁ……。