時のかけら
「あ、そろそろ着くよ」
哲哉さんの声に伏せていた顔を上げると、目の前に大きな橋が映った。
「この橋を渡ったらすぐの場所だから」
それから橋を渡り、他愛のない話を続けているうちに目的地に到着したらしく、車は駐車場に入っていった。
一歩外に出ると夏の日差しが容赦なく照りつける。
今日は快晴――。
辺りを見回せば、既に水着姿で歩く人がちらほら。
……えっ?
何あれ、凄い……。
そんな海水浴客の中で一際目立つ、肌が真っ黒に焼けた若い女性の姿が目についた。
もしかしてサーファーなのかな?
そう思うぐらい肌が全身真っ黒で、髪の毛は太陽の眩しい光に負けないぐらいの金髪。
それも一人じゃなかった。
遠目に見るその人たちのグループらしきものは、みんな同じような感じで、やっぱサーファー仲間とかなのかなって一人で納得していると、
「ルリ、日焼け止め塗る?」
「あ、うん、塗る!!」
未だ車の中にいた哲哉さんに声をかけられ、再びドアを開けて車内に戻った。
体を伸ばして後部座席に置いてあるバッグを取った哲哉さんは、中をごそごそとして日焼け止めを取り出した。
それを受け取りながら、何て準備がいいんだろうと感心すると同時に、少し見えたバッグの中に疑問を感じた。
もしかして、哲哉さん……。