時のかけら
体が固まったかのようにキョトンとあたしを見つめる哲哉さん。
あれっ、もしかして違った?
何の返答もない状態に少し焦りを覚えて、
「あの……、哲哉さんがあたしを元気付けようとしてくれたのかなぁ、とか思って……」
見事な勘違いだったら、かなりの自意識過剰だと思って、恥ずかしさから声がどんどん小さくなっていく。
すると、哲哉さんは大きな目を細めて柔らかく微笑んだ。
「んー、そうじゃなくて」
「やっぱり違った? アハハッ……」
笑って誤魔化すしかない。
そんなあたしをクスクス笑いながら優しく見つめる哲哉さん。
「ほら、よく言うじゃん。好きな子ほど……って、あ! ルリ、先に降りてるね!」
言葉と同時に勢い良くドアの閉まる音が聞こえ、あたしは車内に一人取り残された。
哲哉さんは何をそんなに慌てていたんだろう。
首を傾げながらそのまま下を向き、まだ塗っていなかった足に日焼け止めを塗っていく。
それにしても白い肌。
まったくと言っていいほど日焼けしていない肌。
薄く伸ばした日焼け止めによって、さらに白さに拍車がかかる。
ん?
あれっ、えっ?
ちょっと待って!!