時のかけら
うっすらと目を開けると、眩しい陽があたしを照らしつける。
コンコンッ。
頭に響く音と振動に、急に正気に戻って頭を起こす。
慌てて音のするほうに顔を向けると、車の外から窓を軽く叩く哲哉さんの姿。
あたしは乱れた髪をとかしながら、哲哉さんが車から離れたのを確認してドアを開けた。
「ルリ寝てた〜?」
「あっ……」
咄嗟のことでつい口籠もったあたしに、だんだんと顔をしかめていく哲哉さん。
「もしかして、また頭痛がしたとか?」
「ううん! ちょっと寝呆けていただけ!」
あまりに鋭い発言に内心ドキドキしながらも、慌てて笑顔を向けて思いっきり否定する。
「本当に?」
「うん、本当だよ!」
「そっか、それならよかった〜。ごめんね……待たせちゃったね」
あたしの言葉に安心した様子の哲哉さんは、柔らかい笑顔を向けてきた。
本当に心配してくれてるんだなって感じる。
嘘ついてごめんね……。
そう思いつつも、本当のことは言いだせなかった。
だって……
病院にはもう行きたくないから。