蝶子の夢【完】
「え。どういうこと?」

何言ってるの?何を思い出さない方がいいの?

「今が本当だと思えばいいんだよ。何も思い出さなくていい。そうすれば、幸せだと思わない?」

今が本当?どういうことよ。どうすれば幸せって?

「あのさ、夢野くん。私にも分かるように言ってくれない? 」

夢野くんは口の端をくいっと上げて目を細める。

「だからね、野田さん。分からなくていいんだ。普通にしていればいい。何も考えたりしなければいいだけだよ。」

優しい笑顔でそう言った夢野くんの目は本気で笑ってないと思った。
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