【完】甘い香りに誘われて4 極道の若頭×ちっちゃな姐さん
今はもう玄関で植木さんの姿を見ることはない。
だけどお部屋もわかるし、和室で花を活けていたり
気分転換にお茶を飲んでいると顔を出して下さる。
朝の見送りや夜の迎えの時に、来て下さることも多い。
だから淋しさを感じることもなく過ごせているわけだ。
由香里さんは、エレガントなワンピースの上にカーディガンを羽織り
その優雅さにうっとりとしてしまう。
私を見て一言
「自転車に乗ってみるつもりね」
吹き出しているから
コクリコクリと何度も微笑みながら首をたてにふった。
神田さんにお願いしますと頭を下げて車に乗り込むと
前には当然三浦さん。
門から外へと車が走りだすと
「結衣さん自転車屋ですかい?」
少しばかり眉を顰めている姿に
「三浦、あんた自転車に乗れる?」
由香里さんはものすごーくストレートに三浦さんに聞いた。
ここには神田さんもいる。
この場で乗れませんとは言いにくいだろう。
完全に乗れないと決めている私。
いや乗れないでいてくれたら面白いと思っていた。