【完】甘い香りに誘われて4 極道の若頭×ちっちゃな姐さん
わがままを言って大泣きしていても植木さんの姿が見えると
横目でチラッと見てボリュームを下げる。
「菫ちゃん、我儘言ってる子がいるって聞いたんですけど知ってやすかい?」
植木さんの言葉には思いっきり首を横に振る。
「そうですかい、植木の勘違いでしたかい」
その言葉には何度も何度も頷く。
植木さんにガツンと怒られた事もないのにどうしてなのか
どんな方法を使ったのかまったくもってわからないけれど
植木さんを怒らせちゃいけないというのはわかっているようだ。
「植木さん、反抗期になったら助けてくださいね」
「そりゃもうお任せくだせぇ」
娘の反抗期を楽しみにしているのも変だけれど
佐和子さんが名前を呼ばれただけで今でも正座するというのだから、どんなだか私も見てみたいと思う。
静かに立ち上がった菫は、私と植木さんから逃げるように
「きーたん、きーたん」
桐生さんを探しに家の中を歩きまわる。
桐生さんが眠っていたってごはんを食べていたって
静電気のように纏わりつく。
ひとしきり遊んでもらうと落ち着いて戻ってくる。
そんな感じだ。