俺、お前以外は愛せないから ~私とアイツの仮面舞踏会~
萩原さんの名前は出しちゃダメだよ。





「私達が、時計を見ずに歩いて来たため、遅れてしまいました。申し訳ございませんでした」





「ちょっ、すみれ様?!」





竜太郎が驚いて声をあげたけれど、私は顔を上げなかった。





「……ふーん。学園祭か」




頭の上で紙をめくる音がする。





企画書を見てるんだ。





「会長さん、顔を上げて?」





さっきの氷のような声とはうって変わった、甘い声に眉をひそめながらも私は顔をあげた。





その瞬間、白石洸の細い指が私の顎をとらえて引き寄せた。





な、なに……?





突然のことに目が白黒する。





白石洸はそんな私の顔を見て笑みをこぼした。





「ねえ……」





ひっ!





顔が近くなって白石洸の息がかかる。





「俺のものにならない?」




……はい?





幻聴が聞こえたかも。





< 68 / 99 >

この作品をシェア

pagetop