幼き日の約束
私がハルを見つけたのは
夜中であった。
ハルは崖っぷちに立っていた。
自殺の名所であるその崖。
何かを考え込みながら、
じっと下を見つめる姿。
考えられるのは自殺をしようとしている
ということくらいだった。
「やめて!」
気づいたら、叫んでいた。
気づいたら、駆け出していた。
振り向きかけた男のコートを
思い切り引っ張った。
2人で降り積もった雪の上に倒れこんだ。
「何やってるんですか!」
私はハルの頬を思い切り打った。
ハルは、はぁーっと深く息を吐いて、
目をつぶった。
目から流れた涙が、
少し赤くなったその頬を伝わって
落ちて行くのが見えた。
私もまた、涙が溢れて止まらなかった。
「死ぬなんてそんなことっ
…だめですっ」
あぁ、
あそこに行った私が言える台詞でもないのに…