舞姫


そんな話をし終わって20分ぐらいたって
棗のが帰ってきた

棗「ただいま」

蓮「おかえり」

玲「おかえり!」

昂・幸「おかえりなさい」

ビクッ

私が昂と一緒に“おかえりなさい”って
言ったら棗がびっくりして少し震え始めた

すると、

ぷるるるるる〜ぷるるるるる〜

誰かのケータイが鳴った
誰のかと思ったら棗のだった

メールっぽいな
かなり急いで内容見てる

すると

棗「ぁ…や、やだ…いやだ…」

玲「棗?どーした?」

棗…震えてる…

蓮「棗?」

棗「やだ…いやだよ…や……すけて」

小さな声で何かを呟いて、涙目になってる
微かに“いやだ”とか
“助けて”って聞こえる

幸『棗?どーしたの?』

棗がこうなってる理由はきっと
メールの内容だと思った
だからその内容を見ようと
私が近づいて棗に触れようとしたら

棗「こ、来ないで…やめて…はっはっ」

パニックを起こして過呼吸になり始めた

そしてあたしが棗に完全に触れると

棗「はっ…や、やだ…やめ……ガクッ」

目に涙を浮かべて失神してしまった
そこを私が抱きかかえる形になった

玲「おい!お前何してくれてんだ!
棗倒れちまったじゃないか!」

幸『そんなこと、
言われなくてもわかってる
玲於、そこの棗のケータイ取って』

玲「んだよ、
ほらよ・・・」

幸『ありがと・・・』

玲於からケータイを受け取って中身を見る

内容は――――

“早く帰ってきなさい”

そう、書いてあった

たったこれだけの内容で
パニックになるなんて理由はひとつだ

幸『棗、ちょっとごめんね・・・』

そう言って棗の服をめくり、お腹を見た

玲「なっ!?」

蓮「嘘だろ・・・」

昂「そんな・・・」

そこには無数の痣や切り傷があった

喧嘩とかの跡なんかじゃない
一方的にやられた跡だ

痣に触れてみると

棗「や、やめてっ・・・ごめんなさい・・
いい子に・・するから・・やめ、て
痛いよ・・・やめて・・・・・・・・
お父さん・・・」

玲「どういうことだよ・・・」

幸『虐待されてる・・・』

蓮「そんな・・・」

昂「気づいてやれなかったなんて」

幸『皆、自分を責めるような考え方は
しないで、気づかなくても
しょうがないよ
問題はこれから・・・
蓮、これを私が
どうにかすればいいのよね?』

蓮「え、あ、あぁ・・・
任せて、いいのか?」

幸『当たり前でしょ』

昂「で、でもそんな簡単に
止められるものじゃないですよ?
虐待は・・・」

幸『大丈夫よ
時間はかかるかもしれないけど
一度同じようなことを
したことがあるから・・・

それより
棗が双子って聞いたことある?』

玲「は!?
棗って双子なのか!?」

幸『違う、そういう意味じゃなくて、
そういう噂を聞いたことはあるか
聞いてるの』

昂「いえ、そういったことは
聞いたことがありません
何より自分の事は
全く話してくれないもので・・・」

蓮「俺も聞いたことない・・・

なんでそんな質問したんだ?」

幸『私の知ってる男の子にそっくりなの
境遇も同じ感じだし・・・

私の勘違いだったかもしれないから
棗には言わないで

もしそうだったとしてもきっと、
私と関わっている限り
いつか会うと思うから・・・』

蓮「分かった」

昂「分かりました」

玲「なんで言わねーんだよ!?」

幸『ただでさえ今
虐待されてて精神的に弱ってるのに
さらに今回のこと話したら
棗をひどく混乱させるだけだよ

今はそっとしてあげていた方がいい』

玲「そ、そうか・・・
俺らになんかできることはあるか?」

幸『今はまだ棗に直接どうにか
してあげれることはないけど、
とにかく棗の行動に目を配って

あと、昂にたのみたいことがあるの』

昂「なんでしょう」

幸『覇王では幹部のメンバーのどこかに
GPSを付けさせてたりする?』

昂「はい
一応何かあったときにすぐに
対応できるように幹部は付けてます」

幸『そう・・・
じゃあ幹部の自宅把握はしてある?』

昂「はい
でも把握はしてありますが
直接皆で行ったことがあるのは
蓮の家だけです」

幸『そっか
じゃあ出来るだけ迷わずに
棗の家に行けるように
私と蓮、玲於に棗の家の場所を教えて』

昂「分かりました」

そう言って昂は私達に棗の家を教え
皆が棗の家を把握した

幸『これで棗に何かあった時に
すぐに駆けつけれるね

今はこれぐらいしかできないかな

棗の親がどんなことをしてるか
しっかり証拠を掴まないと
今回のことはどうにもならない』

昂「そうですね・・・」

蓮「棗のことは幸華に任せる
棗のこと、頼むな・・・」

玲「棗のこと、よろしく・・・」

幸『うん、でもまずは
棗を寝かせてあげなきゃ
どこか寝かせられるところはある?』

昂「はい
幹部はそれぞれ部屋があるので
そこに寝かせられます」

そう言ってあたしは棗を抱きかかえ
昂に案内された部屋へと連れていく

幹部それぞれある部屋は、
幹部室を出て、左が階段があって
前の壁には4つのドアがある

その右から2番目のドアを昂が開けて
私が中に入る

中に入るとすぐ右に
テレビとソファがあって
その奥にベッドが横に置かれていて
ベッドの左側には
大きなウォークインクローゼット
その手前に大きな本棚があり、
その手前、つまり中に入ってすぐ左に
下足入れがある

部屋の中は靴を脱いで
入るようになっている

ベッドの前からテレビまでには
大きな黒い絨毯がしかれてある
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