夜と紅と蒼と……
そのまましばらく、肩を並べてベンチに腰掛けたまま、互いに黙って缶に残ってたビールを飲む。
不思議なことに、会話がなくても居心地が悪くなることもなく、彼女も気にはならないらしく足をぶらぶらとさせながら旨そうに喉を鳴らしている。
そんな彼女を横目で確認して、改めて空を見上げると、月にうっすらと雲がかかり、ぼんやりとしたやわらかい光が幻想的だ。
夜の空はとても表情豐かで、見ていて飽きない。
――その静かさと美しさ…
『夜みたいな人だ』
蒼太は隣に座る彼女に再び目を移した。
「……何?」
蒼太の視線に気付いたのか、同じく空を眺めていた彼女が振り向く。
真っ赤な印象的な目と一度目があうと、逸らせなくなってしまって。
「あの……その目って、カラーコンタクトとか……ですか?」
なんとなく違うんじゃないかという気もしたけれど、気になる気持ちを抑えきれず訊いてみる。
「違うよ」
彼女はさらりと言った。
「気持ち悪い?変な奴だって思ってるでしょ。髪も白いしさ……」
彼女は少しくちごもりながら目をそらす。