夜と紅と蒼と……
はじめて出会った……自分に安らぎをくれた人。
無償の優しさを注いでくれた人。
あまりに暖かかったから、気付かなかった。
――痛み
彼が抱えるもの。
『助けたい』
頭のなかで、ひときわ大きく響く声。
気が付いたら、手が動いていた――
「あたしがいる」
蒼太の頬を両手で挟み、その、憂いに沈む黒い瞳を覗きこむ。
「蒼太が望むだけ、ずっといる」
強く、はっきりと。その闇の深淵に届くように……
「だから、泣くな」
透けるように白い、その両手に触れた、濡れた感触を、ただ拭いたくて――
紅葉は、その頬にくちづけた。