夜と紅と蒼と……
――無意識のうちの行動だった。
『彼にはあなたが必要だ』
何故か、熊蔵が言った言葉が脳裏をかすめる。
その意味はよくわからなかったのだが、
『一緒にいなきゃだめだ』
無精にそう思った。
蒼太に自分が必要だというのなら、いくらでも側にいてあげたい。
それで、彼を覆う闇を取り払えるというのなら――
この感情の名前を、なんと言っただろうか?
「大好きだよ」
言葉が勝手に口をついてでた。
「蒼太のことが好きだ」
黒い瞳が大きく見開かれる。
一度、口にした思いは、はっきりとカタチをとり、紅葉の胸に溢れだした。
「紅葉さん……」
少し掠れた声で、蒼太はその名を呼んだ。
「嫌だって言っても、もう遅いから」
自分を見つめる、その真紅の瞳に、吸い込まれそうになる。
「ありがとう……」
やっとの思いで言葉をしぼりだし、蒼太は紅葉を強く抱き締め、言った。
「一緒にいて下さい。ずっと」
「うん」
夜の闇の静けさが。
月の柔らかな光が。
優しく二人を包む――