夜と紅と蒼と……
「緑のやつ……」
客間の襖を開けて、目に入った光景に、二人は思わず苦笑した。
蒼太と紅葉の為に用意したのであろう二組の布団の片方に、緑が大の字になって眠っていた。
二人を待ちくたびれて眠り込んでしまったらしい。
「すみません。すぐもう一組用意します」
緑に布団をかけてやりながら蒼太が言う。
「別にいいよ」
「はい?」
「あたし、蒼太と一緒でいい」
「紅葉さん……」
蒼太が少し困ったような顔になる。
「あの、それはまずいでしょ。僕の理性にも限界ってものが……」
蒼太の台詞に紅葉はクスリと笑った。
「この状況で?」
隣の布団で眠る緑を指差す。
「確かに、そうですけど」
「大丈夫。仮に何かしても怒んないから」
そう言って、紅葉はからからと笑いながらさっさと電気を消して、蒼太の手を引き布団にもぐりこむ。
蒼太も、紅葉に引っ張られるまま布団に入った。
「ぬくい。蒼太、体温高いよね。子供みたい」
蒼太と向かいあうかたちで横になって体を丸めた紅葉が言う。蒼太は、紅葉に握られた手を繋ぎ直して、隣でクスクス笑う、紅葉を見つめた。
「嘘みたいだ」
「何が?」
「一目惚れってかなうもんなんですね」
「なんだそれ」