夜と紅と蒼と……

 紅葉はそう言って笑うと、蒼太の胸元に顔を埋めた。
「なんかさ、本当に嘘みたいだ。まだ会って一週間しかたってないのにさ、ずっと前から一緒にいるみたい」
「僕もです」
 蒼太は、繋いでいない、もう片方の腕で、そっと紅葉を抱き寄せた。
 なんだか胸がスッとするような甘い匂いがする。
 紅葉は別に抵抗する様子もなくすっぽりと蒼太の腕の中におさまっている。

 ――離したくない。

 自分の中に、こんな強い感情が有ったなんて。
 蒼太は自分でも驚いていた。
 最初はただ、側にいられるだけでいいと、思っていた。
 彼女の力になれればと。
 助けたいと……。
 けれど、思い返してみれば。
 彼女の喜ぶ顔を見て、救われた気持ちになってたのは自分のほうではないか?
 繋いだ手に力をこめると、強く握り返された。
「大好きだよ。蒼太」
 その声に、とても満たされた気持ちになる。
「僕もです」
 目を瞑ると、先ほど二人で見た星空が、瞼の裏に映し出されて。

 その光景は、わけもなくせつなく優しく……

 蒼太の闇へ、静かに光をなげかけた――


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