夜と紅と蒼と……



「蒼太! 紅葉! いつまで寝てんだよ!」
 緑の声に目を開けると、もう朝だった。
 真横で眠る蒼太の鎖骨が目の前に見えてドキリとする。
 手もしっかり繋がれたままだった。
「あ、おはよ緑」
 そっと手をほどいて体を起こし、紅葉は、頭上で仁王立ちしている緑の顔を見上げた。
「ぷっ。紅葉、ひよこみてー」
 白い髪をぼさぼさにさせて、紅い瞳をぱちぱちとさせている紅葉を見て、緑がけらけらと笑った。
「うっさい」
 目をこすりながら、紅葉は少しすねたように言う。そんな紅葉と、まだ眠ってる蒼太を興味深そうに緑は覗きこんだ。
「ふーん」
「何?」
 意味深にニヤニヤする緑に気が付き、紅葉は頬を紅潮させた。
「あのな~!! 緑が布団占領してたからで、別に何も……」
「別の布団もあったんだけどな~」
 冷やかすような口調だが、なんだか嬉しそうに見える緑の表情に、紅葉はそれ以上の反論をやめる。
 ここはひとつおとなしく冷やかされてやろうではないか。相手は子供だ。

 それに……確かに……もう、二人は……

「あのさ、あたしずっと蒼太んとこ居ることにしたから」
 ぼりぼりと頭を掻きながら、紅葉は緑へ告げる。子供相手だが何だか恥ずかしい。
「いっかな?」
「いいに決まってんじゃん!!」
 顔いっぱいに笑みを広げて緑は即答した。
「むしろ嬉しい。ああ、やっと蒼太にもまともな彼女が~」
 ふざけてクネクネしながら、うっとりしたような顔をして言う緑に、紅葉は思わず笑ってしまう。
「子供のくせに、余計なこと言わないでもらえませんか?」
 不意に聞こえた蒼太の声に、緑がピタリと動きを止める。
「すみません。少し寝過ぎました」
 隣で体を起こす蒼太と目が合い、紅葉は再び真っ赤になった。
「お、おはよう」
「おはようございます」
 紅葉を見て、蒼太も何だか気恥ずかしくなり、顔を赤くする。
「あーあー。二人して赤くなっちゃって、なんだろね~この人たち」
 そんな二人に緑は不思議そうに首をかしげた。


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