夜と紅と蒼と……



 長いこと電車に揺られ、目的の駅に着く。
 寝起きでぼーっとする頭で、改札をでると懐かしい声に呼ばれた。
「アキラ!」
 改札を出てすぐのところで紅葉が手を振っている。昔から変わらない、長袖、サングラス姿。
「おっす~」
 手を振り返して、はたと気が付いた。男連れだ。
「すぐ分かったよ。相変わらず派手だねぇ。アキラ」
 連れの男の手を引いて、アキラのほうへ来た紅葉が笑う。
 確かにアキラは目立つ。
 長身で、黒い細身のジーンズに髑髏のプリントされた黒いTシャツ。
 長いストレートの金髪をひとつに束ね、腰にはシルバーのチェーンを幾重にも巻いた姿は、どこから見ても目を引く。
「はじめまして。柏木蒼太です」
 紅葉の連れの男が、やんわりとした口調で丁寧に名乗った。

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