夜と紅と蒼と……


『これが例の男か』
 よく見ようと近くまで歩みより、アキラはちょっとムッとした。
 向かい合って顔を見ると、目線が自分より僅かに高い事に気が付いたからだ。
 アキラは身長が百八十三センチあるのだが蒼太はそれより高いらしい。
 アキラは基本的に自分よりデカイ男はあまり好きではない。つまらない見栄だが。
「ども」
 短くそう答えて、繋がれた紅葉と蒼太の手に目を落とす。
「おい。なんか聞いてたのと違うくないか、紅葉?」
 アキラにそう言われて、紅葉ははにかんで笑う。
「あははは。まぁね」
 照れたように言う姿が、悔しいくらいかわいらしい。
「なんだよ、だいぶ心配してたのに。力ぬけるなぁ~」
 ほんの二日前電話で聞いた、悩んでる様子などみじんも見えない紅葉に思わず力がぬける。
「疲れたでしょう。とりあえずうちに来ませんか?」
 蒼太の言葉にアキラは力なく頷いた。

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