夜と紅と蒼と……
「助けになってるつもりで、救われてたのは僕のほうでした」
そして顔をあげ、蒼太は微笑んだ。
「僕のほうが彼女を必要なんです」
『やばっ……!!』
アキラは思わず顔を逸らした。こんなことをこんな表情で言われて落ちない女はいないだろう。
『こいつ、天然か? じゃなきゃそーとーな、タラシだ……」
アキラは、おずおずと蒼太を伺い見る。
悔しいが、どうみても前者のほうだ。
「そ、そうか」
そう答えるのが精一杯だった。
後者の方なら、遠慮なく嫌いになれるものを――
本当のところをいうと、紅葉から電話で蒼太の事を聞いた時、あまりいい思いはしなかった。
子供の頃からずっとそばにいた、お人形のような女の子。
可愛くて、ついいじめたりもしたけど、仲良くなれた時は嬉しくて仕方なかった。
周りからかばったりすると、まるでスーパーヒーローにでもなった気分。
ずっと自分が守るんだと秘かに思っていたのだ。
紅葉が家を出て、ひとりでやっていくと言ったときは、正直へこんだ。
自分では駄目なのだと思いしらされた気がして、悲しくなった。
だけど、珍しく相談を受けて、アキラは思った。
ろくでもない奴なら紅葉を連れて帰ろうと……。
昔のように、自分が守ってやるんだ。
律子もきっとわかってくれる筈だと――