夜と紅と蒼と……
帰り際、ナースステーションを覗くと、律子がすぐに窓口のほうへ来た。
「お父さんの方は明日様子みて大事なかったら、退院して通院になるから」
「うん」
「お母さんはしばらく入院になるから…明日は印鑑と着替えとかもってきて。はい、要るもの書いてあるから」
律子がメモを差し出す。
紅葉がメモを受けとると、律子は、知性的なその顔に笑みを浮かべ最後に言った。
「また、ゆっくり話そうね。蒼太くんの事も聞かせてね」
「うん。色々ありがと。律ちゃん」
紅葉は律子に礼を言って、手を振ると、アキラと二人、病棟をあとにする。
外へ出て、アキラがタクシーに声をかけ、紅葉を呼んだ。
「今日は俺、律子んとこ帰るから。ここまでな」
「仲直りしたんだ?」
「まぁね。やっとお許しがでました」
「そか。良かった。じゃあね」
タクシーに乗りアキラに手を振ると、紅葉は行き先を運転手につげ、病院を出た。