夜と紅と蒼と……


 ――翌日、紅葉は昼近くに目を覚ました。

 昨夜タクシーで家に着いた時には午前四時近くなっていて、長旅の疲れもあり、すぐに居間のソファーで眠ってしまった。
 改めて、住みなれた我が家を見てまわる。紅葉が家を出た時とほとんど変わらない。紅葉の部屋も昔使ってた、そのままで残されていた。
 自室に荷物を置き、シャワーを浴びて、母の入院道具を揃える。
 着替えを出そうと、両親の寝室へ入ると、タンスの上に飾られた写真たてが目に入った。
「お母さん……」
 いくつも並べられた、写真たてには、紅葉が赤ちゃんの頃から、学生時代の写真まで、埃ひとつかぶらないよう、よく磨かれたガラスケースに納められている。
 紅葉は胸が熱くなった。
 このガラスケースは、家をでるときにはなかったものだ。
 紅葉が居なくなって置かれた写真達の意味――

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