夜と紅と蒼と……


 ――愛されている……

 当たり前だと思いつつもいつも心のどこかでくすぶっていた疑念。
 本当は自分など生まれないほうがよかったのではないか?
 そのほうが両親は幸せだったのではないか?
 普通の健康な子供を望んでいたに違いない……自分のような子供が生まれるなど思っても無かったはずなのだ……
 成長するにつれて大きくなっていた疑念。
  とんでもなかった。なんてことを自分は考えていたのだろう。
 こんなに愛されていたのに。
 涙が、溢れた。
 愚かな自分に気づき、決意を新たにする。
『二人が良くなるまで、この家にいよう』
 どのくらいかかるかは分からない。
 でもきっと蒼太はわかってくれる。
 行けと言ってくれた。待っていると言ってくれた。ずっと一緒にいると言った言葉を早速裏切ることになってしまったけれど。
 笑顔で見送ってくれた。
 蒼太はわかってくれる。蒼太だからわかってくれる。
 だから、今は……


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