夜と紅と蒼と……
何も変わらない日常。
朝目覚め、仕事へ行き、帰って眠る日々。
紅葉から電話がかかってくることはなかったし、蒼太も自らかけることはなかった。
日々は淡々と流れ。
梅雨が明け、近頃ではせみの声も聞かれる。
日が長くなり、夜は短くなる。
しばらくすると、夏休み入った緑は、毎週のように、蒼太の休みにあわせて週末になると泊りがけで遊びにくるようになった。
いつ来ても紅葉の姿がないことに少し寂しそうな顔をみせたが、子供なりに気を使ったのか、蒼太に質問攻めすることはなかった。
宿題をいっしょにして、友達の馬鹿みたいな話をしたり、外へ一緒にでかけたり。
おかげで夏の間、蒼太は週末にひとり部屋で過ごすことがなくなり、その賑やかさと忙しさに、随分気持ちを救われた。