夜と紅と蒼と……
紅葉のことは、常に頭から離れることはなかった。
会いたい気持ちは、今もかわりはない。
寂しさや空虚感に襲われることもあったが、緑の来訪がそんな気持ちをやわらげてくれた。
『僕はいつも助けられてばかりだ……』
思い返せば、母を亡くした時にも、緑の存在に随分助けられた。
まだ赤ん坊だった緑。
母親の顔すら知らない緑。
そんな緑を見ると、自分がいつまでも落ち込んでいるわけにはいかないと思った。
ひとりでは何も出来ない緑が、自分の手を求めて泣くたびに、分からないなりに一生懸命世話をした。
自分は必要とされている――
そう思うことで、随分心慰められた。