夜と紅と蒼と……
夏休み最後の週末。
緑はまたやってきた。
紅葉はまだ戻らない。
「蒼太、ねーちゃん何時帰ってくるの?」
たまりかねた緑が聞いた。
「まだ、わからないんだ」
「本当に帰ってくる?」
「うん。きっとね」
蒼太は笑ってそういうしかなかった。
紅葉からの連絡はまだない。
それでも、きっと帰ってくると信じるしかなかった――
夕方、暗くなってから、いつものように緑を駅まで送り、ひとりアパートへ戻る。
戻る途中にコンビニでビールを買う。
そして公園でひとり、夜空を眺め晩酌するのが、近頃の習慣となっていた。
『今日も星がよく見えそうだ』
雲ひとつない、薄闇色の空を見上げる。
完全に暗くなるまで、もうしばらくもかからないだろう。
蒼太は公園へ向かい、ゆっくりと歩を進めた。