夜と紅と蒼と……
「ほんとに……? あたしなんかと?」
信じられない気持ちと、嬉しい気持ちが溢れ返り、自然と涙がこぼれる。
「あたしなんかじゃないですよ。僕は紅葉さんがいいんです」
「でも……」
「僕が言うこと、信じられませんか?」
蒼太の言葉に、紅葉は首を横に振った。
そうだ、蒼太はいつだって誠実で、嘘をついたりはしなかった。
今回のことだって、言ったとおり待っていてくれた。
いつだって蒼太は本当のことしか言わない。
蒼太の言葉に嬉しさで胸はいっぱいだった。
ただ、紅葉にはもうひとつ不安があった。
とても大事なこと。
思い切って訊いてみる――
「でも、もしもだよ。結婚して、子供が生まれて、その子がアルビノだったら……?」
そう、紅葉だって結婚にあこがれたことがなかったわけではない。
好きな人と結ばれ、子供を産み、普通に家族を作り、幸せになりたい。
そう夢見ていた。
だけど、それを考えるたび、生まれてくる子供のことを考えると、自分には届かない夢だと、思うほかなかったのだ。
生まれた子供がアルビノだったなら、自分と同じ思いをさせてしまうかもしれない。
父親は、自分は、その子を本当に愛せるだろうか?
つきまとう、未来への不安。
結婚なんて自分には縁のないことだと、ずっと思っていた――