夜と紅と蒼と……


「大丈夫」
 そう言って紅葉は自ら蒼太の背中に腕をまわし、強く抱きしめる。
 蒼太は、その陶磁器のように白い首筋に唇を落とした。
 蒼太の唇が触れた部分が熱をもっていくのを紅葉は感じ、抱きしめた腕に力が入る。
「蒼太……」
 何度も名前を呼ぶ。
 いとしさで身体中が支配されていく。
 無我夢中で蒼太の身体にしがみついた。
 心だけでなく、身体中が満たされていく感覚。

 触れて。
 繋がって。
 溶けて……

 微かな痛みすらいとおしい。

『ひとつになるってこういうことなんだ』

 熱に浮かされていく意識の中で紅葉は、ぼんやりとそう思った。
「大好きです」
 心地よい音色をもつ、蒼太の声が意識の奥に静かな波紋を落とす。

 広がる波紋に身をまかせ。
 紅葉は目を閉じ、意識を手放した――

 窓から差し込む青白い光に照らされた部屋に、微かな吐息と衣擦れの音。

 夜はただただ優しく。
 ほんの少しせつなくて。

 二人。緩やかな熱に、溶けていく――


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