夜と紅と蒼と……


 しばらくのあいだ、抱き合ったまま。息が静まるのを待って、蒼太は身体を起こした。
「大丈夫ですか?紅葉さん?」
 まだ横たわったままの紅葉を覗くと、紅葉は顔を真っ赤にしている。
「あたし、変じゃなかった?」
 恥ずかしそうな顔でそう尋ねる紅葉が、かわいらしくて、つい笑みがこぼれてしまう。
「いえ、とても綺麗でしたよ」
「そ、そう?」
 ちょっとほっとしたような顔で答えると、紅葉も身体を起こした。
「蒼太、あたしも大好きだ」
 蒼太の頬に軽くキスをしていたずらっぽく笑う。
 背後の窓から差し込む月明かりのなか……微笑むその人を見つめる。

 白く透けるような肌。
 夜の闇に浮かび上がる紅い瞳。
 その光景はとてもとても美しくて……


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