夜と紅と蒼と……
それからしばらくは、週末になる度に、蒼太は紅葉を連れて、紅葉の実家を訪ねた。
「少しでも不安要素はとりのぞいてあげないと」
精一杯の蒼太の心遣いに紅葉は喜んだ。
会う回数がふえていくにつれ、蒼太のことを知るほどに、両親と蒼太はさらにうちとけていき、しまいには両親のほうが、いつ籍をいれるのか聞いてくるほどになっていった。
合間に、熊蔵と緑へも報告に行った。
「よろしくお願いします」
そういって頭を下げる紅葉に、熊蔵は
「蒼太をお願いします」
逆にそう言って、あの、穏やかな笑みを浮かべて
「わたしには分ってましたからね……こうなることは。あの子には、あなたが必要だと……言ったでしょう?」
納得しきった顔でしきりに頷く。
緑は無論、大喜びで、散々二人を冷やかしたあげく、二人が帰るまでずっと側を離れようとしなかった。
紅葉の誕生日が十月だと聞いた蒼太は、入籍をその日にしようと言ってくれた。
熊蔵の取り計らいで、蒼太の実家近くのペンションを借りて、ささやかながら結婚式もあげる事に。
ごく身内だけでしたいという、紅葉の要望で、紅葉の両親、熊蔵、緑、アキラと律子を呼ぶ事にし、蒼太も快くそれに同意した。
満たされた日々。
穏やかな時間。
あっというまに日付は移り、その日はやってきた――