夜と紅と蒼と……

 子供の頃から、その見かけのせいで同じ年頃の子供たちにからかわれたりすることも多く。紅葉は気が強いほうだったから、ついついやり返して喧嘩になった。
 やりすぎて怪我をさせてしまったこともある。
 そんなときも両親は、紅葉を叱ることなく、相手の家に一緒に謝りに行ってくれた。
 自分も両親も悪くないのになぜ謝らなきゃいけないのかと、当時は腹立たしい気持ちでいっぱいだったのだが。両親が紅葉が孤立しないよう一生懸命だったのは、子供心にもなんとなく解ってはいた。
 だから紅葉はあまり周りのことを気にしないことにした。
 髪を染めたり、コンタクトで瞳の色をごまかすことも出来たがあえてしなかった。二人が愛してくれていたから充分だった。
 その父が三年ほど前に、定年を迎えた。
 それを期に自立しようと思ったのだ。これ以上甘えるのはよそうと……
「大丈夫だよ。友達も一緒だし、あたしももう二十五なんだしさ。ちゃんとやってけるって」
 最後まで心配してる二人に嘘までついて、なんとか説得して家をでた。
 確かに少ないながらも、紅葉を幼い頃から知っていて理解してくれる友人もいるにはいたのだが、本当は最初から一人でやっていくつもりだった。
 彼らに甘えていたのでは自立したとはいえないんじゃないかという気がしたから。
 そして、こんな自分が誰も知らないところでどこまでやれるか試してみたい気持ちも強かったように思う……

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