夜と紅と蒼と……
「ど? おかしくないかな?」
「綺麗ですよ」
白いウェディングドレスに身を包んだ紅葉に、蒼太は目を細める。
真っ白な全身のなか、瞳だけが紅く光を放ち、その姿はまるで天使のようにすら見えた。
「誕生日おめでとうございます、紅葉さん」
「この歳で喜んでいいものかな?それは」
苦笑気味に笑う紅葉の頬に、蒼太はそっとキスをする。
「どうして? 歳なんて。僕はあなたが生まれてきてくれたことに感謝してるだけです」
「蒼太。その台詞なんかやばいよ。すっごい女たらしみたいだ」
本当は嬉しくてたまらなかったのだが、恥ずかしくて、紅葉はそんな言葉でごまかした。
「ひどいなぁ。本当にそう思ってるのに」
蒼太は苦笑して、タキシードの上着をはおる。
ドレスもタキシードも、紅葉の両親が用意してくれた。ドレス姿が見たいという、父のたっての要望だ。
「おーい、用意できたか?」
部屋のドアがノックされ、アキラの声が聞こえた。
「はい、いま行きます」
蒼太はドアに向かって返事をかえすと、紅葉の手をとり言った。
「行きましょう。みんな待ってる」