夜と紅と蒼と……


 ドアの外では、どこで用意したのか神父服に身を包んだアキラが待っていた。
「神父の知り合いいるからって……まさか自分がやる気?」
 呆気にとられる紅葉にアキラは笑って言う。
「いーじゃん。一回やってみたかったんだよ。ちゃーんと台詞も覚えてきたから」
「よく似合ってますよ。アキラさん」
 呑気に、にこにこして蒼太が言うので、まあいいかと、紅葉もそれ以上の反論はやめることにした。

 三人が、ペンションの中庭へと出ると、律子が駆け寄ってくる。
「綺麗よ。紅葉 」
 そう言って紅葉を抱き締める律子の後ろで紅葉の両親がそれを見守る。
 律子の肩越しに見えた父の目に涙を見て、紅葉も思わず泣きそうになり、必死で涙をこらえた。
「じゃ、始めるぞ」
 アキラの声で、テラスに向かって、一列に並べられたイスにめいめい腰掛ける。

 すっかり暗くなり、月明かりに照らされた中庭。
 白く塗られた小さなペンションのテラスの下で。
 偽神父の朗読の後、誓いの言葉に導かれ、大切な人達が見守るなか――






 二人は長い長い口付けを交した……


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