夜と紅と蒼と……
綺麗に髪をすき終えると、わくわくしながらふすまをあける。
パパに見せてもらった新しいお家の写真。
木製のベンチが置かれたテラス。
綺麗に芝を植えられた庭。
その真ん中に建つ、白で統一された三角屋根の家は、まるで、絵本にでてくる家みたいにかわいらしくて……お部屋も今のお家より沢山あって。
早く行きたくて少女はずっと楽しみにしてたのだ。
ふすまを開けて見えた、いつも三人でご飯を食べる部屋にはもうテーブルもダンボールもなくって。
いよいよ、もうすぐ出発なのだと、少女は顔をほころばせる。
窓を開けて下を覗くと、四角いトラックの屋根に荷物がゆらゆらと揺れながら運び込まれていくのが見えた。
「紫月。おはよう」
聞きなれた低く優しい声に呼ばれて見れば、トラックの傍らに立つ背の高い人影に気付く。
「おはようパパ~」
少女は満面の笑顔で手を振る。その横にはフードをかぶったサングラス姿の一回り小さな人影もあって、少女にむかって二人揃って手を振り返す。
「もうすぐ出発だよ。降りておいで」
「はーい」