夜と紅と蒼と……
これまで彼女が全くいなかった訳ではない。
むしろ蒼太は、割と異性からよく好意を持たれるほうだった……
背が高くスラリとした体型。
本人が派手ではないので目立つほうではないが、すっきりとした涼しげな顔立ち。
優しく、落ち着いた物腰と声。
およそ、女性に好感を持たれるだけの要素を蒼太は持ち合わせていた。
何度か請われて付き合ってみたこともある。
だが、精一杯の誠意は常に尽すのだが、本当に心から相手に惹かれることはなく、相手もそれに気付くのか、別の相手を見つけたりして自然と離れていった。
それで傷付くということもなかったが、少々そんな自分にもうんざりして、しばらく誰かと付き合うということはなかった。
周りによく、一番楽しい時期に彼女もいなくてつまらなくないかと聞かれたりもしたが、元々一人でいるのが好きなほうだったので別に気にはならない。
無理に誰かと付き合ったりして時間を費やすより、本を読んだり、映画をみたり、夜独特の美しい風景を楽しむ方が好きだった――