夜と紅と蒼と……
ぱちん、と二つ折りの携帯を折りたたみ、無造作にポケットにつっこんで。
再び揺れる座席に背をもたれさせて、窓の外へと視線を送る。
ゆっくりと走る普通列車。
夜の闇に覆われた窓の外を、そのスピードに合わせてゆっくりと通り過ぎる点々とした光は、少しだけ寂しさを感じさせる。
だけどその原因は数時間前の別れが原因ではない。
そう思っている。
こんなことはしょっちゅうで。
原因もわかっている。
だから今更傷ついたりなんかはしない。
居場所を無くしたから、また新しい居場所を探すだけ。
「こんどは、もっとにぎやかなところがいいな」
行くあて先なんていつも決めない。
前へ、前へ。
光に誘われる羽根虫のように、ただただ明るい場所を目指す。
窓の外の闇、その先をじっと見据える。
はるか先で空を明るく染めるネオンの光。
それを見つけて、足元に置いたカバンに手を伸ばす。
まだ揺れは規則正しくリズムを刻んでいる。
近づいてくる光。
それに視点を定めて、落ち着いて待つ。
やがてそのリズムの感覚が、ゆっくりと間を伸ばしてくるその時を――