夜と紅と蒼と……
「あたし……何もしてあげられないしさ。色々面倒で手もかかるし……」
動揺してうまく口が回らない。
――嫌ではない
むしろ、嬉しい申し出だった。
何故か蒼太の側にいると落ち着く。
今日、寝過ぎたのだって。彼のぬくもりがあまりにも心地良くて熟睡してしまったからだ。
「いいですよ。何でも自分で出来ますし、何かしてもらう為にいてほしいんじゃないですし」
「でもさ……」
嬉しいのに、それでも躊躇いがあった。
一緒にいるようになって、蒼太に面倒だと思われるようになるんじゃないかという不安。そして何故かそれを怖いと思っている自分に戸惑って、素直に頷けない。
「自分でも、こんな事を言うの初めてで上手く言えないんですけど……」
少し恥ずかしげに蒼太は切り出す。
「こんな気持ちになったこと今までなかったんです。だからもっと、よく知りたい。あなたの事も自分の気持ちも……せっかく会えたのに、このまま離れてしまうのが何だか嫌で……」
時折り口篭もりながらそう話す蒼太。困ったような……けれど、懸命に何かを伝えようとしている姿。
「だからもう少し、ここにいてくれませんか?」
ねだるように。そう言って微笑む蒼太の顔を見ているうちに……紅葉は何故か急に気持ちが軽くなるのを感じた。
何故か意味もなく、どうにかなるんじゃないかという気がして……
そして、ごく自然に。
「……いいよ」
気がつくと、そう、頷いていた。