夜と紅と蒼と……
紅葉の返事を聞くと、蒼太は、ホッとしたように微笑んで
「じゃあ、食事にしましょう」
そう言って立ち上がると台所へむかって、ニつある買い物袋のひとつを開けて、中身をとりだしはじめた。
「料理するの?」
流し台に並べられていく、魚や野菜といった食材に興味をひかれて紅葉も台所へきて覗きこむ。
「結構得意なんです」
「へーぇ」
「紅葉さんはどうです?」
「全っ然だめ! 実家にいたころは全部母さんがやってたし。最近はコンビニ弁当とか……」
「そうですか」
「それにさ、人間誰でも得意、不得意ってものがあると思うのよ」
何故か紅葉は胸をはってそう言った。
その台詞と仕草がおかしくて、思わず蒼太は吹き出しそうになる。
「紅葉さん面白いなぁ……威張るとこですか? そこ」
「いいの! 苦手なものは苦手なの!」
何度か挑戦してはみたのだ。
しかし、どうやっても思った通りのものができあがらなかったのだ。
笑われたのが少し悔しくて、ちょっとむくれて、部屋に戻ろうとした紅葉だったが、ふと、もう一つの買い物袋があることに気が付き、蒼太に尋ねる。