夜と紅と蒼と……
歩いていく途中、すれ違う車のライトのまぶしさから、時々紅葉は蒼太の腕をつかんだ。強い光に通常の人より敏感なため、目を開けていられないのだ。
そんな紅葉の様子に気がついて、蒼太は傘をもちかえると紅葉に手を差し出した。
「……手……つなぎます?」
「――ありがたいっ!!」
差し出された手に一瞬驚いたものの、実際結構つらかったので、紅葉は素直にその手を取った。
『手をつないで歩くなんて、いつ以来だろう……』
もう二十八にもなるというのに、こんなことぐらいで嬉しくなっている。そんな自分に気がついて、紅葉は少し戸惑った。
『やばい……これはやばいぞ』
相手は七つも下だと侮っていたが、どうも思い返してみれば、ずっと蒼太のペースにうまいことのせられっぱなしだ。
最初に感じた安心感が好意へとかわりつつあるのを、紅葉は気づきはじめていた。
『期待しちゃダメだ』
紅葉は心の中で、そっと自分をいましめる。
けれど、繋いだ手から伝わる心地良い熱はそれを難しくさせる。