夜と紅と蒼と……
「眠いんですか?」
「うーん……あんなに寝たのになぁ」
小さくあくびをしながら紅葉は顔をしかめた。
「布団、ひきます?」
「うんにゃ……まだ大丈夫。多分……」
実は、相当眠かったのだが、もうしばらくこうしていたかったので、紅葉は蒼太の申し出をことわった。
蒼太と並んで座って、夜空を眺めていると、とても静かな気持ちになる。
家を出て以来あった、心の中の何かざわざわして落ち着かない感覚が今はない。
『いつから、こんな甘ったれになったんだ?』
強く生きているつもりだった。
誰にも頼らず一人で。
『全然駄目じゃん』
蒼太の一挙一動に嬉しくさせられてしまう。
一緒にいるのが、こんなに落ち着くなんて。
『寂しかったのか?あたしは』
紅葉は自分に問いかけてみる。
けれど強い睡魔が邪魔をして、答えは出ないまま……
そして、そのまま紅葉は、深い眠りにおちていった――